タイが中国に対してストップ
先月、タイのプラユット首相は高速鉄道に関し記者団に向かって、「目下の国内情勢に立って自前での建設を決定した。」と語りました。つまりは、ここ7.8年ほどタイと中国の間で最大の懸案だった答えに、タイ政府として中国からの協力・支援も求めず、自力による高速鉄道建設に踏み切るという結論を下したことになります。
この高速鉄道とは、1990年代に中国側から計画が持ち上がった「雲南省の省都である昆明を基点として東南アジア(ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ヴェトナム)を陸路・鉄路・水路・空路によるネットワークでカバーする。」というもの。中国がなんとか推し進めようとして譲歩してきた事にたいして、タイが全ては受け入れないよと意思表示した決断。ただ、そこにはいくつか交渉余地を残しており、タイ外交の巧みな戦略が見え隠れしています。面白いそうなので少し調べてみました。
タイ高速鉄道の簡単な歴史
1990年代に中国から持ち上がった計画は、中国西南地区の経済開発と雲南省の昆明を拠点に東南アジアへの勢力拡大を図ったことは、簡単に想像できます。この計画は「泛亜鉄路(ユーラシア国際鉄道)」の一部として、その一部をタイ国内に鉄道路線を引こうとしたタイの鉄道網を無視した中国らしい身勝手な計画でありました。
中国との関係もあり、反応を特に示してなかったタイ側でしたが、この計画にタイ側として具体的に反応を示したのが、反タクシン派のアピシット政権(2008年8月~2011年8月)でした。アピシット政権は中国新幹線技術導入に積極姿勢を示しました。
その後、アピシット政権を倒し登場したインラック政権(2011年8月~2014年5月)は、当然ながら前政権政策を否定していたが、なぜか中国製新幹線計画だけは踏襲していました。アピシットもインラックも中国新幹線に試乗し、技術の高さを讃え、前向きに導入姿勢を示していました。
そして、2014年5月にインラック政権が倒され、クーデターにより軍政が引かれた後、当時のプラユット陸軍大将は、経済政策を例外なくゼロベースで見直す方針を出したものの、この中国新幹線計画だけは、例外として従来からの計画継続が打ち出されていた。その後は、中国李克強首相からの度重なる強い要請に対し、プラユット首相は中国からの技術・資金援助に関しては、歓迎の姿勢は示したが公式に否定はしていませんでした。
2015年秋、タイ・中国両国は最後まで合意に至らなかった借款利率問題を棚上げしたまま、昨年秋、バンコク=ノンカイ間の高速鉄道路線建設に向けての着工式を行うことに。
タイのしたたかなところ
ここからがタイのしたたかなところ。
このまま進むのかなと思ってたところ、この泛亜鉄路計画においては中国側にとってタイの中心部を走る線路が最も重要なキーポイントとであり、この路線を支配下におくことが東南アジア進出の絶対条件であると察したタイの交渉がはじまりました。
まずは、合意に至らなかった借款利率を、中国要求の2.5%から2%に下げさせたこと。この時の中国側からの表明では怒りともとれるようなニュアンスが感じ取られました。
そして、今回のプラユット首相による高速鉄道自力建設の方針表明。まさに、中国のメンツは丸潰れに。ただし、今回のタイ側コメントでは全てを否定した訳ではありませんでした。
それは、プラユット首相が自力建設をすると名言したのが、バンコク-コーラート間であり、タイ・ラオス国境のノンカイ-コーラート間は明言をしてなく、建設の余地を残していることがあげられます。
タイにとっても泛亜鉄路(ユーラシア国際鉄道)は大きなメリットがあり、周辺諸国のみならず中国との取引は重要になります。つまりは、タイ側からの交渉の一手目が今回のコメントになっているのかと。これから巨大中国に対してタイのしたたかな外交が垣間見れるかもしれません。少し楽しみかも。
外交に長けてるタイ
第二次世界大戦の時に、タイは日本と同盟を組んでいたのにも関わらず、「自由タイ運動」を組織し、反日運動を推し進めた結果として敗戦国入りを免れた歴史があります。島国であった日本とは違い、陸続きで多くの戦いや交渉を繰り返してきたタイだからこそ、日本では考えられないような外交テクニックが身についているのかもしれません。
この高速鉄道計画で中国に日本は負けています。今回の件で日本の巻き返しがあるかどうかは、今後次第になるかと思います。ただ、単に親日だからと高を括っての交渉は失敗に終わることが明白です。しっかりと作戦を練っていただきたい。
私個人としては、事故が起こった新幹線を埋めて証拠隠滅するような国の鉄道システムには乗りたくない。なんとしても日本から新幹線技術を提供するよう頑張って欲しいと思います。「お金」より「命」を大切にしてくれる政治家が多くいることを願いします。
~thaiuniおっさんのつぶやき~
タイの「したたか」で「生き残る強さ」があるんだなとあらためて感じた。何となくタイ人女性に通ずるものがあるんじゃないかな。
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